無料オンライン説明会

受講申込(講習日程・空席状況)

お問い合わせ

【特別寄稿】大阪大学名誉教授・細川亙医師「インクメイク(タトゥー施術)違法論」に対する論考 ―第3弾―

2026.11.03

【特別寄稿】第3弾

「厚労省の司法判断軽視姿勢」〜 『インクメイク』は適法な正業 〜

 

【著者プロフィール】
細川 亙(ほそかわ こう)大阪大学名誉教授。医学博士。大阪大学医学部形成外科初代教授、日本形成外科学会元理事長、日本形成外科手術手技学会元理事長、日本形成外科学会名誉会員、アメリカ形成外科学会名誉会員。現在は独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)大阪みなと中央病院名誉院長を務める。形成外科領域における世界的権威として知られる。

 

 2025年12月に日本の法学者123人による緊急声明が発表された。これは生活保護減額を違法とした最高裁判所判決に対する厚労省の対応に対して、「司法判断を軽視し、民主主義の根幹を揺るがす人権侵害行為」として非難した声明であった。私はこの訴訟の詳細については知らない。しかし厚労省がいろいろな理由をつけて司法の最終判断をないがしろにし、いわば日本の政治制度の根幹である三権分立をもないがしろにしている姿勢が現れた典型的な事例であると見ている。

 日本に限らず世界の民主的な国家においては、立法、行政、司法という3つの国家権力が集中しないように、この3権を分離させ独善的・独裁的な権力行使を阻止できる制度・三権分立を採用している。立法府や行政府が人権侵害を行えば、その被害者を司法府が救うことができるというような制度は、立法府や行政府が司法府の判断を尊重しなければ成り立たない。

 もちろん最高裁判所の判断が常に正しいと言っているわけではない。立法府であっても、行政府であっても、司法府であってもその判断に誤りがあることはある。実際に私もある最高裁決定に対して手厳しい論評をしたこともある。

 *特別寄稿 ◉ Doctor’s Opinion 最高裁に物申す! 性別は心(思い込み)では決まらない、身体で決まる(大阪大学 名誉教授 細川 亙) | 集中出版*

 しかし、それでも三権分立の制度には従わなければならない。それが日本のルールである。「tattoo施術は医行為ではない」という最高裁決定に厚労省が納得していないにしても、決定を正面から否定するような通知「美容所等におけるアートメイク施術について|厚生労働省」を出すことは許されないのである。この通知を出した時の厚生労働省医政局長森光敬子氏は医政局長退任までこの通知の撤回に消極的であったが、後任の佐々木昌弘医政局長はこの通知をさっさと撤回して厚労省医政局の喉元に刺さった骨を抜くことをしたらいかがであろう。それとももう実効性さえもなくなっているこの通知をずっと人目にさらし、最高裁による最終司法判断を無視・軽視しがちな厚労省の姿勢を全国民に示し続けたいのだろうか?

【編集後記】
なぜインクメイク導入サロンの営業は「法的・憲法上、適法」と言えるのか

 いかがでしたか。医学界の重鎮であり、形成外科の世界的権威である細川亙大阪大学名誉教授より、極めて明快かつ論理的なご見地をいただきました。

 今回の細川亙先生の特別寄稿でお示しいただいた通り、行政が司法の最終判断である最高裁判決を軽視し、自らに都合の良い通知で規制を続けようとすることは、日本の法秩序(三権分立)において極めて異常な状態です。当協会といたしましても、全国の美容師・サロンオーナーの皆様が安心して事業を行っていただけるよう、以下の3つの補足を明記いたします。

  1. 堺充廣弁護士(元裁判官・元検事)が明かす「過剰規制の矛盾」

 厚労省の通知は、例えるなら「フェラーリ等のスポーツカーはスピードを出せるから、車に乗ること自体を禁止する」と言っているようなものです。スポーツカーでスピード違反(悪質な無資格医療行為)をする者がいるからといって、ルールを守って安全運転(美容目的のインクメイク)をする人にまで、「車に乗るな(=医師免許が必要)」と一律に禁止することはできません。

  1. 憲法第31条「罪刑法定主義(明確性の原則)」から見た通知の限界

 憲法第31条には、「何が犯罪になるのかは、一般の人にも事前に予測できるよう、明確でなければならない(明確性の原則)」というルールがあります。客観的・合理的な根拠を示さず、行政通知だけで法律の処罰範囲を新たに広げることはできません。個々の施術を十分に検討せず、一律に犯罪と判断することには、憲法第31条との整合性が問われます。

  1. 教育現場(コーセー美容専門学校等)での実態化と正当性

 現在、コーセー美容専門学校をはじめとする美容師養成施設(美容学校)の教育現場において、インクメイクの授業が実施されています。実際の教育現場では「公衆衛生の国家資格を持つ美容師の新しい職域」として教育され、社会通念として定着しています。当協会のガイドライン(医療目的の完全除外、事前同意書の取得、使用機器の制限、徹底した衛生管理)を守り提供されているインクメイク導入サロンの営業は、最高裁判決の判断枠組みに照らし、適法な正業です。

一般社団法人国際タトゥーアーティスト協会
代表理事 宮本 恵介

【参考資料】

※ 日本弁護士連合会 会長声明(最高裁判所判決を受けた厚生労働省の対応策の撤回と全ての生活保護利用者への全面的な補償措置等を求める会長声明)(2026年1月23日)
https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2026/260123.html

関連記事

目次