【特別寄稿】大阪大学名誉教授・細川亙医師「インクメイク(タトゥー施術)違法論」に対する論考 ―第2弾―

目次

【特別寄稿】

⼀部SNS等で⾒受けられる「インクメイク(タトゥー施術)違法論」に対する論考
〜 『インクメイク』は医⾏為なのか 〜 第2弾

【著者プロフィール】
細川 亙(ほそかわ こう)大阪大学名誉教授。医学博士。大阪大学医学部形成外科初代教授、日本形成外科学会元理事長、日本形成外科手術手技学会元理事長、日本形成外科学会名誉会員、アメリカ形成外科学会名誉会員。現在は独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)大阪みなと中央病院名誉院長を務める。形成外科領域における世界的権威として知られる。

 前回の特別寄稿は、厚労省通知(2021年7月、2025年8月、2025年12月)を我田引水してタトゥーを医行為と主張し競業者を排除しようとする医療関係者に向けた論考であった。今回の第2弾は、医業としてではなくタトゥーを行っている(あるいは行いたい)人たち(医師免許を持たない美容師などの人たち)へのアドバイスとお願いである。

厚労省の姿勢

 厚労省通知が無効であるという私の見解は美容師などの方々にとっては心強いものであろうが、無効な通知を厚労省が撤回しないどころか続々と追加しているのはやはり心配で不気味に感じられることだろう。「これらの通知は2019年の最高裁判所決定に違反し無効なので撤回してください」と、梅村聡衆議院議員や国際タトゥーアーティスト協会宮本恵介理事長などとともに私は厚労省と何度か折衝を重ねてきた。厚労省の担当官らも通知の矛盾や現場組織による行政指導ボイコットを認識してはいるものの、厚労省として一度(いや、三度も)発出した通知を今さら撤回することは難しいようで、身動きが取れなくなっているように見える。

訴訟には「訴えの利益」が必要

 厚労省が自ら動かないならば、訴訟を起こして「これらの通知は2019年の最高裁決定に違反している」というお墨付きを新たに裁判所からもらえれば安心できる。しかし、日本において裁判制度を利用するためには「訴えの利益」というものが必要であることをご存じだろうか?

 つまり「これらの通知は最高裁決定に違反している」という判決をもらうには、その判決により原告に利益を生じることが必要で、利益を生じない訴えは訴えそのものが不適法として却下されるというのが日本の裁判制度なのである。例えば私が「厚労省通知は最高裁決定に違反して無効」と主張して裁判を起こしても私には訴えの利益がないので却下されてしまう。したがって、厚労省によるこれらの通知を裁判所に持ち込んで葬り去るには「訴えの利益」を持つ人が訴訟を起こさなければならないということを理解してほしい。

訴訟に持ち込む方法

 保健所や地方厚生局が「タトゥーは医療行為であるから医療者以外によるアートメイク施術はやめろ」と言ってきて営業を妨害されたなら、損害賠償請求の訴えを起こすことができる。だから、保健所や厚生局による営業妨害行為を受ければ、それによる損害も含めてしっかりと記録を残しておき訴訟の準備を整えるのが良い。あるいは医療関係者からの営業妨害による損害も訴訟の種にできる。妨害してきた医療関係者を相手取って損害賠償請求を行えば、被告(医療関係者)は妨害することの正当性、すなわちタトゥー施術が医行為であることを主張することになり、その点を裁判の争点とすることができる。

厚労省を正すまたとないチャンス

 行政機関は過ちをなかなか認めないものである。行政機関が行う法律解釈にはかなりの自由度が認められているからで、行政に対して違法という司法判断が下されることは極めて稀である。しかし本件は厚労省の2001年通知(タトゥー施術は医行為であるとする初めての通知)が最高裁判所においてすでに明確に否定されている貴重な事例である。否定された内容と同様な厚労省通知を裁判所が無効と判断するであろうことは容易に想像でき、訴訟に持ち込めば国や都道府県は損害賠償責任を負うことになるであろう。

 それどころか、この明らかに無効・違法な厚労省通知の発出は、官僚の故意あるいは重過失によるものと考える余地があり、そうなれば官僚個人の責任さえも追及できることになるかもしれない。近年の警察・検察を含めた行政の失策(大川原化工機事件など)に対して公務員個人の責任をも追及する社会的傾向を考慮すれば、この問題に対する厚労省の頑なな姿勢は厚労省本体だけでなく官僚の個人責任さえも将来追及されかねない事態になると私は思っている。

私権を守るだけでない社会的な行動を期待

 美容師などの方々には、自らの権利を守るということだけのために行動するのではなく、きちんと厚労省を法令に従わせ、美容師業界、美容師仲間全体が安心して胸を張って正業に就ける社会になるように是非とも頑張ってほしいものである。

【当協会からのお知らせ】不当な営業妨害事例の収集と、訴訟等における全面的支援について

 細川亙大阪大学名誉教授からの力強いエールにもある通り、現在、厚生労働省の矛盾した通知を盾にした一部の保健所による過剰な指導や、SNS等における医療関係者からの心ないバッシング(営業妨害)が散見されております。そこで、当協会は、インクメイクを適法かつ安全に提供されている事業者の皆様をお守りするため、以下の体制を強化いたします。

不当な「営業妨害事例」の収集
管轄の保健所や地方厚生局から法的根拠に乏しい指導を受けた場合、あるいは医療関係者等から不当な営業妨害や嫌がらせを受けた場合は、当協会までご報告ください。

訴訟に向けた協会の「全面的支援」
ご報告いただいた不当な営業妨害や、それに伴う経済的損害の事例につきましては、当協会が窓口となり情報を集約いたします。その上で、行政に対する国家賠償請求や、妨害行為者に対する損害賠償請求訴訟等に発展する際には、当協会が法務・医療の専門家チーム(顧問弁護士・医師等)と連携し、皆様の「盾」として全面的にバックアップ(支援)いたします。

 インクメイクは、最高裁判決という揺るぎない司法の判断に基づいた適法なサービスです。ご自身の正当な権利と、美容業界の健全な未来を守るため、そして何より皆様が安心してビジネスに邁進できる社会の実現に向け、協会が常に伴走し、全面的にサポートしてまいります。

一般社団法人国際タトゥーアーティスト協会 代表理事 宮本 恵介

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